乙女ゲーム夢4
□手作りの価値
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「翔、トキヤ」
授業が終わった後、ふと名無しさんが仲のいい二人に声をかけたのを見て眉にしわがよった。
・・・・・・だから。
俺の前でその二人と喋んなって言ってんのに……っ!
大人げなくみっともない嫉妬をして、けれども無視して立ち去ることも出来ずに教卓の上を片づけるふりをして聞き耳を立てる。
「はい、チョコ!」
「チョコ、ですか?」
「お、手作りか?」
「!?」
聞こえてきた内容にさらに驚いてびくりとした。
チョコ? しかも手作り!?
自分の眉間にさらにしわがよるのがわかって心の狭い自分が嫌になる。
でもそれを今割り込んでいくことも出来ないとわかっているから余計に嫌になった。
「うん、一日過ぎたしいいかなって」
「さんきゅー!」
「ありがとうございます」
嬉しそうに笑って礼を言う二人に笑い返す名無しさんの姿に理性が振り切れた。
「お? ……っ!」
「日向先生? いったいどうし・・・」
鬼のような形相をしている自覚がある。
オレの顔を見て思わず動きを止めた来栖と一ノ瀬にはさまれて困惑した顔でオレを見上げる名無しさんの手首を痛いほど握って、引いた。
「ぃ、たっ」
「こいつ、借りていくぞ」
無言で頷いた二人を背に教室を出て指導室へと足を向けた。
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