乙女ゲーム夢4

□手作りの価値
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「はい、龍也さん。バレンタインデーのチョコ!」


笑顔と共に渡されたかわいくラッピングされた包みに頬が緩んだ。



「さんきゅーな」



オレが包みを開けるのを楽しみにしている様子の名無しさんの頭を撫でながら包みを開ける。




「お、もしかして手作りか?」




ブラウニーとトリュフが入った箱に指をのばしてつまもうとすると、先に名無しさんがそれを指先でつまんでオレの口元につきつけた。




「!」




「はい、あーん」



邪気のない笑みで突き出されたトリュフチョコにほんのりと頬が熱を持つ。



「おま・・・」




「ちょっと夢だったんだ、こんな感じでチョコ食べさせてあげるの」




「〜〜〜〜〜っ!」




「あ」




やけくそでぱくりと指ごと食べて、その手首を掴み指先もぺろりと舐め上げる。


反応を窺うように彼女を見やると俺以上に真っ赤になった彼女にほんの少し溜飲が下がった。



「顔、真っ赤だ」




「りゅーやさん・・・・・・た、たらしだ〜っ」



「失礼だな。お前だけだぞ?」




「う――――っ」




むっとしつつもその頭をぐりぐり撫でながら引き寄せて、囁いた。



「美味いよ。ありがとう」



「う、うん・・・」



俯く耳が赤くてかわいい。




残りの分は自分で口に運びながら、俺は思い出して眉間にしわをよせた。



「そう言えば、お前な。一ノ瀬と来栖と仲良すぎないか?」




「え? そうかな? そんなことないと思うよ」




むぃっと表情を強張らせた名無しさんにオレは喉の奥でため息を殺した。



毎度毎度この話題でケンカになりそうになるのもどうかと思うが……。




「ま、いいけどさ。さて・・・そろそろ寮に戻れ」



「えええ!? まだ一緒にいたいっ」



駄々をこねた彼女にオレは首を横に振った。




「駄目だ。明日も授業なんだからな」



「むぅ・・・はぁい」




渋々立ち上がってドアに向かう彼女を追いかける。




「気をつけて戻れよ?」


「うん」


「名無しさん」


「ん? っ!」



不意打ちで唇を奪って、オレは間近で彼女に微笑みかけた。



「チョコ、まじでさんきゅーな」



「うん!」


笑って帰って行く彼女を見送って、オレは頭をがしがしとかいた。




「・・・・・・ま、チョコもらったのオレだけだったみたいだしな。大人げないのもどうかと思うし……仕方ないか」



言い訳がましく自分に言い聞かせたその言葉を、オレは次の日大いに後悔することになる。


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