乙女ゲーム夢4
□この、鈍感!
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私が差し出した四角い箱を一瞥して、蘭丸さんははんと鼻を鳴らした。
「お前バカか? 俺は甘いもんが嫌いだっって知ってんだろうが!」
差し出した瞬間に怒鳴られてドキドキしていた気持ちが一気に冷める。
でも追い打ちをかけるように蘭丸さんはさらに言い募った。
「大体バレンタインってなんだよ? お菓子会社の戦略だろうが。ったくお前ものせられんなってんだ・・・・・・バカバカしいにもほどがあるぜ」
いつものような口の悪さ。
でも、蘭丸さんが食べれるようにってスパイス入りクッキーのレシピを探したり少しでも美味しく作れるように練習したり包装紙を選びに行ったりドキドキしながら詰めたりメッセージカードを書いたり・・・・・・それまでにかけた時間や手間や「喜んでもらいたい」っていう気持ちまでこき下ろされたみたいで正直いい気分はしなかった。
蘭丸さんが口が悪いのは知ってたけれど、でもこんな時くらいは少しくらい喜んでくれるんじゃないかって思った。なのに。
「おい、聞いてんのか?」
「っ」
きっと蘭丸さんを見上げる。
気持ちまで無下にされて、笑って「気づかなくてごめんね、バカだね私」なんて言うことは出来なくて私は力いっぱい四角い小さな箱を彼に向かって投げつけた。
「いてぇ! なにしやが・・・・・・っ」
「蘭丸さんの、ばか……っ!」
「おい!」
最後に見た蘭丸さんの顔は涙でにじんでいて、ただ驚いているんだろうってことくらいしか分からなかった。
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