乙女ゲーム夢4

□ひとめぼれ2
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「こんばんはー・・・」




恐る恐る店の中を覗くと結城さんの姿は見えなかった。


待ちつつ中の花を見ていると、新しい鉢植えがいろいろ入ってきていて目新しかった。



「わ、かわいー…」



「あれ、名無しさんちゃん?」


「!」


「来てたんだね! ちょっと待ってて。もうすぐ店閉めるからさ」



いつもの笑顔。
それが嬉しくてにこにことしてしまう。


「あの、お構いなく! お花見て待ってますから」




「ほんと? いつもごめんね〜・・・・・・ありがとうっ」



困った顔で、それでも嬉しそうにそう返してくれた結城さんに笑い返してお店の花に目を向ける。
その時最後のお客さんが入ってきた。



「あ、いらっしゃいませ! お久しぶりですね〜」


にこっと笑みを浮かべて接客に近づいた結城さんを見てほんの少し端に身を寄せる。邪魔になっちゃ悪いしね。

けど・・・・・・その女性は結城さんにチョコレートを渡していた。




「―――」


それを笑顔で受け取っている結城さんを見たくなくて、なんとなしに店の奥に視線をずらして・・・・・・もっと嫌なものを見つけてしまった。



「……」




たくさんの、チョコ。




今日一日でこんなにもらったんだ・・・・・・。



奥に崩れないように山積みにされたチョコの包みに、私はきゅっと胸を掴まれたみたいになった。



―――やだ。



―――やだ。




こんなの、やだ。


久し振りに会って、嬉しいはずなのに胸の奥がすごくどろどろしてて気持ち悪い。


笑ってチョコレートを渡したかったはずなのに、嫌みや皮肉を言ってしまいそうな自分がいる。







――――帰ろう。



私はいったん脱いだコートをもう一度身に着けマフラーを首に巻いた。




「今日のおススメは・・・・・・あれ、どうしたの?」



お客さんの相手をしていた結城さんが玄関に向かおうとする私に怪訝な視線を向けた。

それを真正面から見ることも出来なくて、私は口早に告げた。


「また今度来ます。おやすみなさい」


「え? ちょっと!」



引き留めるような結城さんの声を背中に聴きながら私は家路を急いだ。


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