乙女ゲーム夢4

□ループの末に
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妹みたいに思っている可愛い可愛い千鶴。



それなのに、なんとも言えず嫌になってしまうのは自分が気持ちの置き所を分かってないからだ。





「土方先生、かっこいいなぁ…」



国語の教科書を見ながらぽつんと呟いた千鶴をちらりと見て、私は頷いた。



「好きだねぇ」


「うー・・・・・・だって素敵なんだもん」



「まぁ、確かに」



「いいなぁ、名無しさんちゃんは教科委員で。一年生は土方先生じゃないんだもん」



頬をぽっと染める千鶴は文句なしに可愛い。

こんな千鶴なら土方先生とうまく行くんじゃないかとか、生徒と教師だったらやっぱり難しいんじゃないかとかいろいろ思うけれど、口だけで応援できる性格でもないからあいまいにごまかす。



「学校の先生ってなんで素敵に見えるんだろうね。原田先生も人気あるよね。やみで永倉先生も」



意外とイケメン揃いの教師陣を思い出してそう言うと、千鶴が少しむっとした顔をした。



「名無しさんちゃんはいつもそうやってはぐらかすけど、私本当に好きなんだから」



ゆるぎない強さを持った瞳に少し驚いて、ごまかし方を間違ったと反省した。




「ん…ごめん。でも私はむやみやたらと頑張ってなんて応援できない。だから、変なごまかし方してごめん」


真正面から謝ると千鶴は怯んだ顔をしてしおしおと俯いた。
彼女の顔にも反省の色が滲む。


「・・・・・・ごめんね、名無しさんちゃん。でも私名無しさんちゃんのそういうところ好きだよ。よくも悪くもまっすぐなところ」




ちら、と上目遣いに見つめて悪戯っぽく目を細めた千鶴に苦笑する。



「私も千鶴のバカみたいに素直なとこ、好きだよ」


「バカみたいって何!?」


「あっは! 失礼失礼」



「もうっ」



顔を赤くして怒ったように片手を振り上げる千鶴をいなしながら、苦く思う。


千鶴の恋が実ればいい。



でも、実ったらあの人は・・・・・・。

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