乙女ゲーム夢4
□二人とも
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「いらっしゃい、姫」
にっこりと笑うあなたの笑顔に、私は一目ぼれをしてしまったんだ。
「ふぅ…」
「あれ、ため息。珍しいね?」
きょとんとしながら私の水割りを作ってくれるつばさくんに、私は慌てて取り繕った。
こんなんじゃ嫌われてしまう。
「ごめんなさい、なんでもないの」
「・・・・・・いいよ、そんなに謝らなくても。ただいつも笑顔でいるからさ、名無しさんさんって。だから珍しいなぁって。何か悩み事? オレでよかったら話を聞くけど」
くす、と笑ってそんな風に言ってくれるつばさくんに胸がうずく。
優しいなぁ…。
ホストに一目惚れなんて、笑い話もいいところなのに……どうしても私は彼に会いに来ることを止められない。
「んー…聞いても面白くないですよ? ほぼ絶対」
「大丈夫だよ、そんな心配しなくても。ここは癒されに来る場所でもあるんだし……ね?」
こと、と目の前にグラスを置かれて氷が動くカランという音を聴きながら私はようよう口を開いた。
「実は・・・・・・両親が時代遅れにもお見合い話を送ってきて・・・・・・」
「お見合い?」
つばさくんの声がぐっと低くなって、違和感に彼の顔を見るとつばさくんは笑顔のまま先を促した。
「えぇと、断ろうとしたんですけども相手が誰もいないなら会うだけ会いなさいって…今日程を詰められてる途中で、気のない相手に会うのがなんだか気重だなぁと」
「・・・・・・会う必要、ないんじゃないかな?」
「え?」
冷たく響いたつばさくんの声に驚いて顔を上げると、すっと顎を持ち上げられて距離が近くなった。
「決まった相手がいればいいんでしょ? だったらオレがいるじゃない」
それがどういう意味なのかを問いただす前に唇が重なった。
「オレも、一目惚れだったんだよ」
2013/01/14