乙女ゲーム夢4

□蜘蛛の糸のごとく
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「百合子、今日は僕と一緒に活動写真を見に行かないかい?」


「え、本当!? 行きたいわ、ぜひ!」




「・・・・・・」




藤田の給仕で朝食を食べながらのその会話に、私はそっと視線を俯けた。



「名無しさんは? 名無しさんも行くでしょう?」



私の方を無邪気に見て、行かないという選択肢などないだろうという表情を浮かべた百合子にあいまいな笑みを送る。




「私は…」



「行かないの?」



柔らかな物言いの中に、鋭く責める響きをくみ取って、私ははっと瑞人お兄様を見た。

きっと百合子姉様にはわからないだろう、その表情。





「・・・・・・ぜひ」



こくりと頷くと瑞人お兄様はふっと頬を緩めた。



「兄妹水入らずでお出かけか……ずいぶん久しぶりだね」



楽しげにそう言って魚をほぐす瑞人お兄様と、嬉しそうな様子を滲ませる百合子姉様。



・・・・・・この二人の間にいることは苦痛だというのに、私は逃げることすら許されなかった。


瑞人お兄様は百合子姉様をお好きなくせに、私のことも傍から離したがらない。




早く厄介払いしてしまいたいはずなのに。


私も私で、早く瑞人お兄様を諦めないといけない、と妙に急いた気持で思っていた。

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