乙女ゲーム夢4

□蜘蛛の糸のごとく
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いつだったか。



お兄様、と無邪気に呼びかけた私に対して瑞人お兄様はしばし動きを止めた。

返事がないことを不思議に思っていたら、視線を合わされて瑞人お兄様は真剣な顔で私を見つめた。




「名無しさん、いいかい? 僕のことはお兄様と呼んではいけない。せめて瑞人お兄様と呼ぶんだ」



「え…なぜ? 百合子姉様はお兄様のことをお兄様と呼んでいるのに」



幼心に何故姉様はよくて自分は駄目なのだろうと腹が立ったのを覚えている。
幼いながらも整った顔立ちの雪のように白い肌を持った美しい少年は、ほんの少し眉をひそめた。



「あの子はいいんだよ。でもお前は駄目だ」


「どうして!?」



語気荒く問い返した私に瑞人お兄様は厳しい顔をして首を横に振った。



「その呼び方は、百合子だけのものだからね。お前は呼んではいけないよ」









その言葉は鋭利な刃物のように私の心を傷つけ、そして悟った。


瑞人お兄様にとって百合子姉様が特別なのだと。

たとえ妹だとしても私ではその「特別」になれないのだと。








そして大きくなって、自分がもともとこの世界には存在しない存在だったことを認知して、納得した。


瑞人お兄様は、百合子姉様をずっとずっと幼い頃から愛しているのだ、と。

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