乙女ゲーム夢4
□手塩にかけて
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こたつに入ってみかんを食べながらテレビを見ていたら、がたっと玄関のドアが開かれてばたばたと足音荒く誰かが家に入ってきた。
「うるさいよー?」
弟かな、と思って声をかけると私の声でどこにいるかがわかったのか、そのままどたばたと居間の方にその誰かが進んできた。
「名無しさん!」
「えっ? 烝くん!?」
まさかの人物、しかもやたら怖い形相をした烝くんにぎょっとすると彼はその形相のまま私の肩をがしりと掴んだ。
そのままがくがくと揺さぶられて手からうっかりみかんが零れ落ちた。
「お前! なんで!? 沖田さんに告白されたって本当か!?」
「う、わ、うぷ……っ、ちょ、烝く……っ!」
「受けたのか!? あの人はろくでなしだぞ!? 遊ばれて捨てられるのがオチだぞ名無しさん!?」
好きなように言い放って私の反応を縋るように待つ烝くんに、私は意地悪がしたくなって口をとがらせた。
「・・・・・・だって、こんな私のこと好きだって言ってくれる奇特な人、沖田先輩しかいないもの」
肩を竦めて目の前の烝くんを見る。
「沖田先輩よりも素敵な人が私のことを好きだって言ってくれる保証ないでしょ? 遊ばれるのは嫌だけど、沖田先輩ってけっこう一途だよ?」
「……れは……」
「烝くん?」
俯いて唸り始めた烝くんに少し薬が効きすぎたのか、と思って声をかけたらばっと烝くんが真っ赤になった顔で私を見た。
「沖田さんにやるなら俺がもらう!」
「ちょ……っ」
どういう意味だ、という突っ込みをする間もなく重ねられた弾力のある唇に思考がいっぺんに吹き飛んだ。
「んぅ、んっ! ふぅ……っ」
みかんの味のする口内を烝くんの舌が這いまわる。
頭も両手で固定されて逃げることも出来ずに私はされるがまま口づけを受けていた。
「は……っ!」
「はぁ、は……っ!」
赤い顔で荒い息のまま、烝くんは私を睨みつけるように見つめた。
「手塩にかけて甘やかしてきたお前を、沖田さんに横からかっさらわれてたまるかっ」
キャラが違う、なんて突っ込みを許さないくらいに叫んだ烝くんに私まで顔が真っ赤になった。
(妹というより紫の君)
2013/01/06