乙女ゲーム夢

□猫と猫っぽい人
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「ふぅ……」



 静かだなぁ……。





「名無し君」

「あ、はい! 山崎さん?」



 ぼうっとしてたから驚いちゃった。……呼び声に振り向くと、山崎さんが私の方を向いて手招きをしている。……いつもだったら近くに来てしゃべるのにどうしたんだろう?



「どうしたんですか、山崎さ……」



「にゃあ」





「……」






 山崎さんが、にゃあ?



 う、かわいい……思わずかわいいと思ってしまった!




「こいつだ」




「へ?」




 なに?
 山崎さんが抱えてる小さな箱の中を見下ろすと……




「わぁ!」





 子猫だ! 一匹の子猫が「みぃみぃにゃあにゃあ」鳴いてて、ちっちゃくてすごくかわいい……





「子猫ですね! どうしたんですか?」



「ああ……拾ったんだが……」



 縁側に箱を降ろして山崎さんは言いにくそうに言葉を紡いだ。



「拾った? 山崎さんが!?」



「ああ……だが、その、副長に言ったら……」



 山崎さんがすごくしゅんとした顔で肩を落とした。



「飼えるわけねぇだろ、捨てて来い、と言われて……」




「あぁ……」




 まぁ土方さんだしね。土方さん命の山崎さんはそう言われて凹んだみたいだけど。




「名無し君!」


「ふわぁっ!」



 なになになに!?




 とつぜん両手を握られて私は思わず後ろにのけぞってしまったんだけど、その分を詰めてくるようにして山崎さんが追いかけてくる!




 照れたらいいのか鬼気迫る表情に怖がればいいのかわからなくて、顔を引きつらせながら私はどうにか体勢を立て直した。




「一緒にこいつを飼ってくれないか!?」






「へ?」





「何もずっとと言ってるわけじゃない! 飼い主は見つけて来た!

 だが引き取るのに三日待ってくれと言われてる! その三日間だけ……副長たちの目を……どうにか」





「はぁ……」




 子猫を飼うために土方さんの目をあざむくだけでそこまで気合を込めなくても……。ほんとにこの人真面目だなぁ……。


 ……まぁそんなところがこの人のいいところなんだろうけど。




「しかしご飯もあげなくてはいけないし、そうなるとどうしても賄い方の君の協力が必要なんだ! 秘密を厳守するためにも君と俺の二人だけで!」





「……えーと、三日だけって言ったら土方さんも捨てて来いとは言わないんじゃ?」








「いや、あの人は言う! そういう人だ!」







「……」










 いや、言わないと思うんだけど……山崎さん、何気にひどい……。




 どこか切羽詰まった様子でぎゅうぎゅう私の両手を握る山崎さんにくすりと笑みがもれた。




「名無し君?」




「いいですよ、一緒に飼いましょう」




「! 本当か!?」




 ぱっと山崎さんの顔に笑みが浮かぶ。
 いつも無表情だから……なんだか新鮮だ。





「はい」
 






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