乙女ゲーム夢

□父と恋人の違い
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 私はなんの因果か新選組に入って、そこで尊いものを二つ得た。


 一つは、恋人。



 原田左之助さん……すごくすごく好きな人。短い眉毛にいつもときめいてる。


 そしてもう一つは。











「お父さーん!!」









「だれがお父さんだ!」




 走っていって後ろからぎゅうっと抱きついた!


 鬼の副長、土方歳三さん。



 軽く頭をはたかれて、すぐさま身を離されそうになるけど腰にぎゅっとまとわりつく。






「ったく、俺はお前みたいな歳の子供がいるほど歳くってねぇよ!」





 そんな風に目を怒らせながらも私の好きにさせてくれるんだから、すごく優しい人。






「えへへー」





「気持ち悪い笑い方すんじゃねぇよ! と、おい、原田!」





「お、どうしたんだ? 朝っぱらから大声出して、あんたらしくねぇな」




「これ連れてけ! お前のだろうが」



「はぁ?」



「左之さん?」



「って名無しさん! 
 お前なにしてんだ……」



 土方さんの背中から顔を出すと左之さんがぎょっとした顔をして呆れたようにため息をついた。



「なにやってんだよ。ほら、こっち来い」



「!」




 手を広げてくれるのがうれしくてぱっと笑顔をうかべた。



「ほら、とっとと行け。原田が待ってんだろうが」




「うん」




 くしゃりとなだめるように頭をなでられて私も笑顔をうかべた。





「おはよう、左之さん」





 とてとてと左之さんの元に走っていくと、左之さんはなぜか微妙な表情をしていた。







「あ、ああ。おはよ」




「? どうかした?」





「……なんでもねぇよ」





 左之さんはそう言うと、散歩しようと言ってくれた。














 でも私はまだ外出許可が出ていない。





 だから。





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