乙女ゲーム夢
□未来へ
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「……?」
いつものデート、いつもの秀臣さん、いつもよりすこし高そうなレストラン、そして……。
自分の持ち上げたシャンパングラスに目をやって、私は固まった。
それをおかしそうに見ている秀臣さんがいたけれどそんなことよりも私はシャンパンの注がれたグラスの底に沈んでいる銀色の光に目を奪われていた。
「……そんなに見つめなくてもなくなったりはしないと思うが」
「……こ、これ」
なんて言っていいかわからなくて私は言葉を探した。
「ちゃんと給料三カ月分だ」
「そ、そんなことじゃなくって……」
そう、そんなことじゃなくて、ただ
「ど、して?」
疑問が膨れ上がる。
だって……私が見てた雑誌を見たにしても、秀臣さんの行動が早すぎる気がして、いつからこんな風に考えてくれていたのかって考えると自分の覚悟ができていないような気までしてきて戸惑った。
「ひどいな。君は俺を弄ぶつもりだったのか?」
私の様子がよほどおかしいのか、一人優雅にシャンパンを口に運びながらにやりと笑って秀臣さんはいけしゃあしゃあとそう言った。
「……」
「しっかり俺の将来に責任を取ってくれ」
「それ、ふつうは女のセリフだよ?」
憮然として、シャンパンをぐっと飲み干した。唇に当たる金属の感触。
私が置いたグラスの中から、秀臣さんがリングを取り出してハンカチで水滴をぬぐった。
そして私の左手をそっと取って……
「……俺と、結婚してほしい」
左手の薬指に銀色のリングをはめてくれた。
冷えたシャンパンに冷やされたその冷たさをまじまじと見つめる。
現実味が薄くて、でもこの状況はいましかないんだと思うとふしぎな感じで。
私は自信満々なくせにどこか不安げな視線を寄こしてくる彼に、自分ができる一番の微笑みを贈った。
「喜んで」
2010/03/08