乙女ゲーム夢
□見えない気持ち
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「危ないですよ」
「え? きゃ!」
体勢を崩したところを腰をぐっと抱えられて支えてくれる。男らしい腕にどきりと胸を鳴らしながら私はお礼を言った。
「あ、ありがとうございます」
「いいえ。しかし、本当になにもないところで転ぶんですね」
「ドジなんです……しょっちゅう青あざ作ってるんですよ」
「足もとを見て歩いた方がいいですよ。……私の顔ばかり見ないでね」
「っ!」
ば、ばれてる!
かーっ、と顔が熱を持つのを感じながらとちらりと見上げる。
「……ばれてました?」
「ええ。それは熱心に見詰めてくるものですから、私の顔に穴があくのではないかと心配になりましたよ」
「……すみません」
「いいえ。まぁ身長の差が大きいですから仕方がないでしょう」
「レイさんって、身長いくつなんですか?」
「182です」
「……」
30センチ物差しが一本入る差なんだけど。
憮然とする私にレイさんはくすりと笑った。
「どうしたんです?」
「なにもありません」
「なにもないという顔ではなさそうですが」
「……わかって言ってません?」
「なにがそんなに機嫌を損ねたのか……わかりませんね。教えていただけますか?」
「むぅ……」
「……いいんですよ? そんなにいやなら……言わせて差し上げますから」
「え……んぅっ」
あごをつかんでキスをされる。
……甘くてとろけそうなキスだけど……。
レイさんが本気でないことぐらいわかってる。
それどころか、私はレイさんに嫌われてるから。
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