乙女ゲーム夢

□尻にひかれた
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「……すみませんでした」


ぐすぐすと鼻をならして泣く私の隣で柊さんが途方に暮れたようにつかず離れずの距離で鎮座している。















たまに抱きしめようとのばしてくる手をぺしりとはたき落とす。






いまだに涙は止まらなくてぼろぼろ溢れてくるし、鼻もかっこ悪くぐすぐす鳴るしサイアク……。



泣き顔が一番ぶさいくだとわかっているのに止まらなかった。




「……」




「……」




なんで泣いてるか。



それは柊さんが意地悪すぎたから。


なにをされたかって……



そんなのはずかしくて言えないけど。




「や、やだって……言いました!」



「……そう、でしたかねえ」





「! ま、またそうやってはぐらかす!!」





「!?」






 再び、だーっと流れはじめた涙に柊さんもぎょっとしてしまったと思ったみたいで、あたふたとしている。



 ……そんなもの珍しい姿に、ざまあみろ、とすこし思うと溜飲が下がった。







「……抱き締めさせてくれませんかねえ、せめて」





「や、です! だって……変なことするから」





「……」






 変なことってどんなことですか説明していただけませんか、なんて返ってこなかったのはそろそろちゃんと反省してくれたからだろうか?










 そんなことを思っていると、こつん、と額になにかがあたった。そろりと視線をあげると、困ったように力なく笑った柊さんが私の額に自分の額をあてて上目づかいに見つめてきた。








「……」




 か、かわいいかもしれない……。








「……あなたが泣いているのに、抱き締めさせてももらえない、というのはすこしかなしすぎるんですがねえ」







「……泣かしたの、だれですか」









「それを言われると心苦しいんですけれども」









 すっと身を引いてなお困った顔をする柊さんに私は両手をのばした。それをおどろいた顔で見て、すぐにほっとしたように柊さんは抱き締めてくれる。









「……ありがとうございます」





「変なこと、しないでくださいね」


「……ええ」




「これからも」


「……」





「返事!」
















尻にひかれる感じの柊さん。

2010/03/06

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