乙女ゲーム夢

□親子のような
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「ほら、口についてますよ」

「あ、ありがと」

「……なんかさぁ、流聖さんと名無しさんさんって親子みたいだよね」

「!?」

 お、親子!?

「おいおい、つばさ。俺はもうそんな年なのか?」

「あ、すみません! ちがいますよ〜、でもなんだか和やかでいいなって思ったんです」

「……和やか」
 























「……うー」



「さっきからなにをうなっているんですか?」


 ふしぎそうに問われて私はぐるりと流聖さんを振り返った。

「だってー、つばさくんが……私と流聖さんを見て親子って言うから……」


「……ああ、それで」


 我点がいった、とばかりに笑って流聖さんが私の頭をよしよしとなでた。






「それ!」






「え?」







「それがダメなんだと思います!」






「……これ?」


 流聖さんがきょとんと私の顔と自分の手を見比べた。













「そーです。私、流聖さんと4つしかちがわないんですよ? 頭なでるのおかしくないですか?」







「……いやですか?」





「うっ」





 いやかどうか、って聞かれたらいやでもなんでもなくて気持ちいいしうれしいし安心するんだけど!



「いやじゃないならいいじゃないですか」




 くす、と笑って流聖さんは私の手を握って歩き出した。




「……なんでかなー、私の背が低いから? 下手したら物差しが一本入りますもんね」







「俺は好きですよ? 小さくてかわいらしいと思います」





「……」

 流聖さんがそういうならそれでいいかな、とか思って。



 でもでもでも!



「でも私たち……この間やっと恋人同士に昇格できたんじゃなかったですか?」








「そうですね。あなたはちゃんと、俺の恋人ですよ?」







「なんですけど……」



 だって親子とか言われたらかなしくない!?


 和やかってどういうことなの!?



 せめてお似合いのカップルとか、落ち着いた雰囲気のカップルとか言われたらまだ……いや無理か。私にそんなのハードルが高すぎる。







「……あなたはあなたそのままでいいんですよ。無理に変わろうとしたりする必要はないんです」








「え?」





 見上げると、安心させてくれる穏やかな瞳が見つめ返してくれる。









「俺があなたを好きで、あなたも俺を好き。なおかつ俺がいまのままのあなたがいいんだと言うなら……ほかになにが必要なんです? それに……」



 流聖さんが腰を落として私の耳元に口を近づけた。













「……俺は子供にあんなことをするほど鬼畜じゃあないですよ?」












「っ」


「わかっていただけました?」


「……わ、かりました……」


「それはよかった」


 流聖さんが目元にくしゃりとしわを作って笑った。








 ……流聖さんが好きでいてくれるならそれでいいかな、と思って。


 私もつないだ手にきゅっと力を入れた。
 


2010/03/06
 

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