乙女ゲーム夢
□不潔!
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……だったら私、すごく柊さんに失礼なことしちゃった!
嫌われたらどーしよー……!?
青ざめてると、後ろからぎゅっと抱きしめられた。
「っ!」
このかおり!
「やっと見つけた……」
「ひ、柊さん……」
いつも余裕でいる柊さんが、なぜかはぁはぁと息を切らして汗をかいている。
なんで……?
「探しましたよ。長年この家で暮らしていた私ですら忘れていたような場所にいるんですからね。……いつもおっとりしているから足が遅いだろうと思っていたら、こんなに足がはやいなんてね。おどろきました」
くすり、と笑った左の頬がほんのりと赤くて申し訳なくなった。
そうだ……謝らないと!
「……叩いてごめんなさい」
「いいんですよ。わかっていただけましたか?」
満足そうに笑う柊さんに私は意を決してうなづいた。
「へ、偏見で見ちゃってごめんなさい! 私……不潔なんてひどいこと……そうですよね。世の中には男と女しかいないんだし、柊さんが男性を好きだとしてもそれは仕方ないことだと……っ!?」
「っ! まったくあなたは……! こんなこんなところでなんてことを叫ぶんです?」
あわてて私の口をふさいだ柊さんが呆れたようにそう言った。すこし脱力している気がするのはなぜなんだろう?
「ふむむむむ?」
「ああ、黙って聞いていてください。ぜんぶ誤解なんですから」
「?」
「私は、してませんよ。男性となんて一度もね」
「むぐー?」
「嘘じゃありません! まぁしまりがいいといいますし、試してみようかと思ったことがなかったとはさすがにいいませんが」
「……!」
し、しまりって……!?
「しかしねえ、どうにも気がのらなかったと言いますか……男の体に魅力を感じなかったと言いますか。とにかく私は女性にしか興味がありませんよ」
「だって……」
「……母はカン違いをしていたようですし、たしかに他の生徒の中にそういう性癖の人がいたことはいましたが、上に乗られようがなんだろうが私は自分を守り抜きましたとも。お分かりいただけましたか?」
「……ほんと?」
「ええ。私が女性に反応する体だということはあなたがよくよくお分かりだと思いますけれどもね」
「それは知ってるけど……だって言われてみれば柊さんって亞沙斗くんとつばさくん大好きだし、流聖さんとレイさんとも息があってるし、奏くんには癒し系だって言ってかわいがってるし、ヨハンくんにもなんだかんだ世話を焼いてあげてるし……あれ? やっぱり……」
「気色の悪いことを言いますねえ……」
「……ちがうの?」
「ちがいます」
「……私のカン違い?」
「ええ、濡れ衣です」
「……そっか」
「ええ。……ほっとしましたか?」
「えへへ、ほっとした」
にこぉ、っと笑うと柊さんもほっとしたように笑って私の頭をなでてくれた。
「穴があればどこにでもつっこむというわけじゃないんですよ」
「!!! はずかしいこと言わないでくださいー……」
「ふふ、さて。あなたを探して汗をかいたことですし、ホテルに帰ってシャワーを浴びましょうか」
「あ、そうですよね。帰りましょうか」
「……あなたも一緒に入るんですよ?」
「ええっ!?」
「隅から隅まで余すところなく洗い清めて差し上げますよ」
2010/03/06