乙女ゲーム夢

□愛の深さ
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彼についていくと、スタッフルーム?バックヤード?うながされて椅子に座る。









「……なにか飲みますか?」






「いい。すぐに帰りますから」





「……私はいただきますよ」




「ご自由に。ここはあなたの店だそうですから」



「……怒っていますね。私があなたに黙ってホストクラブなんて経営しているからですか?」


 なんて、言えばいいんだろう? 


 自分の感情の置きどころがわからなくて、私はなぜかこみあげる涙を必死でこらえた。


「……なんて顔をするんです」


「……なんで嬉しそうなのよ」



「嬉しいですよ。そんな顔をするほど私がホストをしているのがいやなのか、と考えればなおさらね」



「勝手にすればいいじゃない。いやだなんて言ってない。私になにも言わずにいままでずっと勝手にしてきたんだから、これから先もそのようにすればいいわ」




「それはそれは。理解のある許嫁で助かります」



「それ」



「なんです?」


「でも私はそれ撤回する」


「はい?」


 余裕綽々、という感じでグラス片手に話していた彼の顔がやっとおどろいたように崩れた。


「それはどういう意味です?」



「許嫁やめる」




「っ!? ……母さんが許さないと思いますが」




「おばさまにはわかってもらえるわ、きっと。だっておばさまが一番私の気持ちをわかってらっしゃるもの」



 惣一郎さんそっくりのおじさまにいつも苦労してたから。


 私はすっくと立ち上がった。


 決まった。
 やっと、この人と別れる決心がついた。
 だって惣一郎さんの誕生日すら祝わせてもらえないなんてそんな許嫁がいる? ……会えるのが月に一度か二度、それも私を抱くためだけに会っているんじゃないかと言いたくなるような逢瀬の時間で。


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