乙女ゲーム夢

□愛の深さ
2ページ/4ページ











「……おしゃれ」










 きらびやかなのはきらびやかなんだけど……上品さを兼ね備えているというか。





「いらっしゃいませ」





 ほわー、と思いながらあっちこっち見ながら美央のあとに続く。


 店に入ったところすぐに生けてある花に私は目をとめた。


「!」


「姫? あの、どうかされましたか?」


「っ! すみませんっ」


「もー、名無しさん、なにやってんの?」


 美央とひげを生やしたホストさん?がふしぎそうに私を見ていた。


 でも、そんなの関係なくて……私は花を指さして聞いた。


「あの、あそこに生けてある花はだれに頼んで生けてもらっているんですか?」


 とつぜんの私の問いに彼はおどろいたようだけど、すぐに営業スマイルに切り替えて「ああ」と笑った。


「キレイでしょう? それはうちの店長が生けたんですよ」






「……店長?」






 あれ、ちがった?


 私は首をかしげて自分の感性にもう一度問いかけた。


 だってあれは……











「私が生けた花が、どうかしましたか?」














「っ」


「ああ、店長」


「こんばんは、柊さん」


 ……柊、さん?


「ああ、こんばんは。いらっしゃいませ」


 この、声……。







 まさかまさかまさか。








 私がゆっくりと振り向くと、余裕のある笑みをうかべていた彼はおどろいたような表情に変わった。







 でもすぐにその表情を隠した。







「こちらのお姫様は私が生けた花に興味があるようです。流聖、美央さんを先に宅へ案内してください」


「わかりました」


 空気を読んだのか、店長に従ったのか、流聖と呼ばれた男性はすぐに美央をエスコートしてきらびやかな世界へと戻った。









「……」


「……ここで話すと人目がありますからねぇ。よろしければ中へどうぞ」


「……」


 取りつくろうでもなく、焦るでもないその姿に、自分の眉間がぐっとしわを寄せるのを感じた。



 ……私に見られたのも大したことじゃないってことね。



 こういう態度で返されるから、こっちだってなおさらかっこわるくすがりついて責めるわけにはいかなくなるのだけれど。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ