乙女ゲーム夢
□言葉よりも雄弁な
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「なにを考えている?」
「えっ?」
横からあごをつかまれてくいっと顔をあげられた。
「俺と共にいるというのに考え事か」
「……俺様」
「なんだと?」
……こうして触れてくる指が、どれほど切ないか知らないくせに。触らないでよ、と思う。でも触れてくれる指にドキドキしてうれしいとも思う。
なんでこんなに女心は複雑なんだろう?
「ふ……」
小さく口元で笑って千景は私の口元ぎりぎりにキスを落とした。……いつも、そうだ。決定的な態度はない。でも、期待だけは散々持たせて……独占欲だけは人一倍で。
私の心が徐々に徐々に傾いていくのを楽しんですらいるのではないかと思う。
「ばぁか」
だから私は、恥じらう顔など見せない。うれしいという顔など見せない。不機嫌な、すべての感情を押し隠した顔で見るんだ。
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