乙女ゲーム夢
□質問
2ﾍﾟｰｼﾞ/2ﾍﾟｰｼﾞ
「……」
「……」
「……あの」
「！」
「さっきからなんですか？ すごーく気になるんですけど？」
「……聞きたいことがある」
常日頃からまじめな顔をしている一さんはいつもと変わらない静謐な瞳でそう口にした。
「？ なんですか？ 私に答えられることなら答えますよ」
「……千鶴には聞けなかった。鬼のことだ」
「！ なにかあったんですか？」
私も千鶴と同じ鬼だ。
直系筋とはいかないけれど他の鬼よりは力が強い。なにかあったのだろうかと気を引き締めた。
「……気になることがある」
「なんです？」
私は、次の瞬間笑うでもなく怒るでもなく一さんが吐き出した言葉に耳を疑った。
「女鬼はいつ抱いても初物なのか」
「……」
「……」
「……は？」
なに、が聞きたいのかこの男は……。
いやわかるよ？ わかりますとも！
でもなんだってこんな下品な会話をしているのかがわからない。それにこんな話題を沖田さんがにやにやしながら純粋な悪気のある顔で聞いてくるならまだわかる。でもなんで一さんがこんなこと聞いてくるの！？
「……もしかして沖田さんに言われてきたんですか？」
「何故ここで総司が出てくるんだ」
不可解そうに問い返されて私は余計混乱した。
「……じゃあ、なんだってそんな疑問を抱いたんです？」
「……ふと気になった」
ふと……？
ふと、抱いたらどうかと気になったって？
「……一さんって、男性だったんですね」
なんていうか、とてつもなく純粋な疑問なんだろうけど言ってることは下品極まりない。というかその発想自体が下品極まりない。
「……」
一さんがぎょっとした顔で自分の下半身を見つめた。
……ああ、この人隠れた変態だったのか。
「……それで」
「はい？」
「まだ答えてもらってない」
「……」
まだ言うか！
「……体験したことないんでわかりませんよ、そんなこと！」
わかるか！
というかわかっても言いたくない！
顔が赤くなるのを感じながら私はやけくそで叫んだ。
「なるほど」
無表情にうなづいた一さんは……ゆっくりといやな笑みをうかべた。
「……は、一さん？」
なにかな、その笑顔は……？
いやな予感に後退るとその分だけ一さんが間合いを詰めてきた。
「確かめてやる」
「はいっ！？」
「気になる。抱くたびに痛むのか、抱くたびに血が出るのか」
「ッッッ！」
げ、下品！
開いた口がふさがらないとはこういったことだろうか？
ぱくぱくと口を開閉させて私は逃亡するためにくるりときびすを返した。
けど。
「っ」
「逃げるな。何故敵に背を向ける」
「敵！？」
もうこの人なに言ってんの！？
「……安心しろ。仕置きをしてやる」
耳元でささやかれたその言葉と声に足から力の抜けた私は、おいしく一さんに食べられてしまった……。
翌日、すっきりした顔で隊務にはげむ一さんの姿があったとか。
2010/03/03