乙女ゲーム夢

□玩具
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「……」






 えーと、もしかしてバカにされてる?


 後ろから抱き抱えるように座られて、千景の足の間にはさまった私は間近にきた顔を困ったように見つめた。だってなんでこんな風に座られたのかわからなかったから。言葉のセクハラならいくつも受けてきたんだけど、今度は手まで出すつもりだろうか。








「お前は元の世界で結婚はしていなかったのか」



「してないよ」

 だって私まだ17だし。





「なるほどな。ではまだ初物か」





「……」

 セクハラじゃないんですか、これ!?

 いつもは助けてくれる天霧さんもいなくって私は立ちあがろうとした。


 でも。









「待て、どこに行く」







「ここじゃない場所です」

 
「許さん」









 ……なんで一々あんたの許可がいるの!






 そんなことを思っていたら、さらりと髪をあげられた。





「……きれいな髪だ」





「!……あ、ありがとう」



 そんな風に千景にほめられたのははじめてで、頬が熱をはらむのを感じながら私はお礼を言った。




「? 千景?」





 髪の毛で遊んでるの?
 なんて思っていたら。







「……やはり似合うな」








「え?」





 満足そうな笑みを含んだその声音と、頭の後ろからきこえたしゃらりという音に私は頭に手をやった。指先に触れる、金属の感触。これは……?










「お前に似合うと思ったから買ってきた」







「……」



 素直に、うれしい、と思った。




「……うれしい、ありがとう」



 意識して笑うんじゃなくて、こぼれるように笑みがでた。



 それを見ていた千景はちょっと目を見開いて、すぐに照れたように顔を赤くすると私の頬に口づけた。




「これはキスというのだったな」



「っ!」


 な、なんで!?



 しかも頬に、という意外なかわいらしさに私が驚いていると、千景は私の首筋に手を這わせた。



「……そうやって俺の与えた物に身を包むといい。これからお前を形作っていくのは俺だ」


「……」



 それは、不器用に吐き出された独占欲というもので。



 俺様でわがままで、不遜な彼は私が拒むということも考えていない。



 明確な言葉はない。



 でもそれ以上に明確に態度に示してくれる。
 ……なんだかんだ言ってほだされてきているのだ。
 千景に拾ってもらえてよかった……。
























『……おかしな格好をしているな』
『刀……!?』
『……ふん。来い、俺の元においてやろう』
 に、と笑ったその顔が魅力的で私は魅せられるように差しのばされたその手をつかんでいた。
 ……きっと最初から、捕まっていたのだ。
 風間千景という鬼に。














「……俺の色に染まるがいい」
 そう言って、千景は私にキスをおとした。

2010/03/03
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