乙女ゲーム夢
□ずっとずっと・後
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「ね、九寿? 九寿ってば!」
空き部屋に連れ込まれると、やっと九寿は手を離してくれた。
「いったいなに?」
「……あなたは無防備すぎる」
「え?」
いつもみたいにやさしくさとすような怒り方じゃなくて、九寿はぐっと眉間にしわをよせると低い声で怒鳴るのをこらえるようにしてそう言った。
「……わかっているのですか、あなたは女性でしかも人間だ。あまりに無力」
「っ」
そんなこと……言われなくても自分が一番わかっていた。
「……風間は男なんですよ? 襲われればひとたまりもない、あなたは抵抗すらできないはずだ」
「? 風間は私のことを襲ったりしないよ。だって殺す価値もないでしょう?」
「っ!」
ダン!
なにが起こったかわからなかった。
気づけば顔の横で大きな音がして。私の手首は顔の横にぬいつけられていた。上から、九寿が見下ろしてくる。
私は押し倒されていた。
「……こういう、ことですよ」
「きゅ、じゅ……」
「あなたは男というものをわかっていない。あんな無防備に、うかうか近寄ればいつかはこうなっていたはずだ! 不知火にもあんな笑顔を見せて……!」
「……風間との縁談など……許しません」
「九寿……?」
「まだ早いと思っていた……、ですがもう無理だ。
あなたは魅力的になりすぎました……」
こんなときだというのに九寿の口から魅力的だと言われたのがうれしかった。
「……風間に奪われるくらいなら、既成事実を作りましょう」
「え?」
「私はあなたを愛している」
「!」
いま、なんて……?
私の耳はおかしくなったんだろうか?
欲しくてほしくて仕方なかった言葉が聞こえた気がした。
「もう我慢はしません。あなたが欲しくてたまらなかった」
「九寿……」
ずっとそんな風に思ってくれてたの?
私の縁談を断り続けていたのも私のことが好きだったから?……ずっと子供扱いしかされていないと思ってたのに。
「……はじめてのあなたには私のものは辛すぎるかもしれませんが……時間をかけてならしてあげましょう。あなたはこれから私以外の男を知る必要はないのですから」
「え? どういう、意味?」
意味もわからないのに頬がほてるのはなぜなんだろう?
「大丈夫です。私の大きさになれてしまえばいい。……私の体でなくては満足できないように、たっぷりと愛してあげましょう」
そして九寿の体が私の影とひとつに重なった……。
→おまけ