乙女ゲーム夢
□すれ違い
3ページ/5ページ
「千鶴、さ」
「うん? どうかした?」
きょとんとすこし首をかしげた友だちの顔に、なんともいえない怒りがこみあげてしまって、そんな自分がいやになった。
「……千鶴はさ、だれが……好きなの?」
「え?」
さっと千鶴の白い頬に朱が走った。
……かわいい。
あわあわと視線をあちこちにさまよわせてから、千鶴は赤い顔でうつむくとほんとに小さな声で「沖田さん……」と呟いた。
「……そっか」
やっぱり。
左之助さん……大丈夫かな。
「……名無しさんは?」
「へ?」
あ、そっか。……聞いたらそりゃ聞きかえされるよね。
「……私は」
……言えるわけ、ない。
「あ、そうだ! 私ちょっと呼ばれてたの!」
「え?」
「ごめん! 行ってくるね!」
「ちょ、名無しさん!?」
あわてて部屋から飛び出して走り出す。
……言えるわけ、ない!
.