乙女ゲーム夢

□すれ違い
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「千鶴、さ」



「うん? どうかした?」


 きょとんとすこし首をかしげた友だちの顔に、なんともいえない怒りがこみあげてしまって、そんな自分がいやになった。





「……千鶴はさ、だれが……好きなの?」

「え?」

 さっと千鶴の白い頬に朱が走った。



 ……かわいい。



 あわあわと視線をあちこちにさまよわせてから、千鶴は赤い顔でうつむくとほんとに小さな声で「沖田さん……」と呟いた。

「……そっか」

 やっぱり。

 左之助さん……大丈夫かな。

「……名無しさんは?」


「へ?」


 あ、そっか。……聞いたらそりゃ聞きかえされるよね。

「……私は」

 ……言えるわけ、ない。









「あ、そうだ! 私ちょっと呼ばれてたの!」


「え?」


「ごめん! 行ってくるね!」


「ちょ、名無しさん!?」


 あわてて部屋から飛び出して走り出す。

 ……言えるわけ、ない!




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