乙女ゲーム夢

□すれ違い
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千鶴は、だれが好きなんだろう?







 前に……屯所に鬼が、不知火さんが押しかけてきたとき、左之助さんは千鶴を守るために戦って……でも、負けてしまってその後から二人がぎくしゃくしてた。千鶴は自分が鬼だから気にしてて、避けられてるって悩んでた。でも左之助さんはきっとそんなんじゃなくて、ただ悔しかっただけなんだろう。……だって私には避けるなんてこと、されなかったから。鬼だからって避けられるのなら、きっと私の方が不気味だよね。……女のくせに、こんなに強いなんて。


 ……いつかの、夕方。


 千鶴がとつぜん思いつめた顔をして部屋を出て行ったから追いかけた。


 でも。


 見たく、なかったのに……。

 見てしまった。





 左之助さんが千鶴に口づけてるところ。






 ……やっぱり、左之助さんは千鶴が好きなんだな、って思って。


 でも私は左之助さんを好きになってしまった。


 つらいけど、千鶴が左之助さんを好きで、左之助さんと千鶴が幸せならそれでいいかなって……そう思った。








 だけど。









「ん、どした? 浮かない顔して」

「え……」

「……」

「な、なんでもないよ!」

 千鶴が沖田さんといっしょにいるところをぼうっとながめてたんだけど、いちばん見られちゃいけない人に見られてしまった!

 だって左之助さんは千鶴が好きなのに!

 ……あんなの見たくない、よね。

 申し訳なくてしゅんとしていると、くしゃりと左之介さんが無骨な手で私の頭をなでてくれた。

「左之助さん?」



「……気にすんな」



 ……そんな顔して、そんなこと言わないでよ。
 見てる方が、つらい……。



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