乙女ゲーム夢
□すれ違い
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「左之助さん、入るよ?」
「ああ」
ざっと障子をあけて中に入ると、どうした?って振り返ってくれる左之助さん。
でも。
「っ! ご、ごめん!」
着替え中!!!
目に入った広くてたくましい背中に顔が熱くなる。出ようとしたんだけど止められた。
「なんだ、遠慮するなよ。もう終わる」
そう笑って左之助さんは洋服を着おわった。
……女扱いはされてないってわかってたけど、なんだか切ない。
遠慮じゃ、ないんだけど……こうして入ってきたのが千鶴だったらどうしてたんだろう?
「……左之助さん、髪切るの?」
「あ? ああ。ちっとな」
「……もったいない」
心の底からそういった。だって左之助さんの髪、すごく好きだったのに。
「そうか? ま、べつに願掛けしてるわけでもないんだ。洋服に長ったらしい髪してたら、邪魔だろ?」
に、と笑いかけてくれる彼に、そうだね、と笑いかけた。
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