乙女ゲーム夢

□誕生日
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「え……」

土曜日の天気の良い朝。

私は手の中にある携帯を見て凍りついた。画面には大好きな彼からのメール。……でも。



『ごめん。どうしても抜けられない用事が出来て今日は会いに行けそうにないんだ。本当にごめん。また連絡する』



めったに会えない慧。どうしても今日は会いたい、と。大丈夫だと言われて浮かれていたのだ。


……浮かれ、すぎていた。
だって今日は……。
 

唇を噛んで目頭が熱くなるのをやり過ごす。泣いてしまえば余計に惨めになるのが分かっていたから。
 
ベッドの上で気落ちする私の背中にゲージの中からハムスターのジュニアがご飯の催促をしてきた。


「……そうだね、ご飯にしようか」
 

落ち込んだって仕方がない。仕方が、ないのだ。

私は少し微笑むとジュニアのご飯を作るためにベッドから降りた。
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