乙女ゲーム夢
□ゆきさんと花屋さん4
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彼に面と向って言う勇気はないけれど。……玉砕が、目に見えているから。
自覚してみると、またきゅっと胸が痛む。
どうして、好きな人がいる人を好きになったのか。
……苦しいよ。
「どうした?そんな顔して……」
きゅっとゆきさんの髪を撫でていた方の手を掴まれた。
「!!!」
びくりと肩がはねる。
「ゆ、ゆきさ……お、起きてたんですか!?」
口に出していたわけじゃないのに動揺する。
「う〜ん?おきた……」
……寝ぼけてる?
「……ん〜〜〜〜〜っ!!!あ〜……よく寝た……て……ああ!?名無しさんちゃん?もしかして閉店すんだ!?」
ようやく覚醒したようではっとしたように私を見てゆきさんは青ざめた。
「ええと、さっき。ゆきさん寝てたから起きてから帰ろうと思って」
面白い、珍しい、などと失礼なことを思いつつ立ち上がる。
「じゃあ、帰りますね?くれぐれも戸締りしてから寝て下さい。ずいぶん疲れてるみたいですし」
「あ、待って!!」
慌てたようにゆきさんが立ち上がる。どうしたのだろうか。
「送るよ」
「え?」
そう言ってパソコンの電源を切り薄い上着を羽織ったゆきさんに、慌てて止めに入る。
「でもゆきさんずいぶん疲れてるじゃないですか?私なら大丈夫ですから……」
「だぁめ!!」
いつもと違って無理やりゆきさんは私の手を取った。
「これぐらいさせてよ、ね?いいじゃんいいじゃん」
むっと口を尖らせるようにして言われても困ってしまう。けれどもこうしてうだうだ言っている時間すら余計だろうか。
「それにさ、俺まだ頭すっきりしてないから送るついでに気分転換もかねて」
にこぉっと笑顔で笑ってくれる。
また気を使わせてしまったか。少し凹みながらもこくりと頷いた。
本音としては、これ以上気を持たせないで欲しかったのだけれども。