乙女ゲーム夢
□ゆきさんと花屋さん4
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その後何日かしてから、ゆきさんにそれとなく「大学が忙しくなるのであまりバイトにこられなくなってしまうかも」と言ってみた。まだゆきさんは残念そうにしてくれ、ほっとした。そこで大人の余裕をみせられたら、きっと立ち直れない。
「あれ?」
一人で閉店掃除を終えて、ゆきさんを探したけれどどこにもいない。
今日も今日とて九条さんがゆきさんの首根っこをひっ捕まえて連れて行ったのだが……。
二階にいるのだろう。彼らの仕事部屋は二階だから。
私は少し思案してから二階に向って声をかけて見た。
「ゆきさん、もう閉店し終えましたよ?ゆきさん!」
返事はない。
閉店が終わったら二階に顔を出すように言われていた。
仕方ないか、と思い階段を上り始める。
ゆきさんの家は一人暮らしには広すぎた。しかしパソコンの機材やら何かの資料やらで布団回りまで浸食されているからこのくらいの広さでも広すぎるということはないのかもしれない。
「ゆきさん?」
ぐるりとまわりを見回してみるが誰もいない。返事もない。
出かけた気配などしなかったのに。
「ゆきさ……いた」
ゆきさんはソファの上で資料を抱えたまま資料に埋もれて寝ていた。足が長いので窮屈そうにしている。
しかしよほど疲れているのか起きる気配はない。