乙女ゲーム夢

□ゆきさんと花屋さん2
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「ん〜〜〜」

バックではゆきさんが九条さんの持ってきた仕事を片付けていて、

私は客のいないお店の掃除。

ゆきさんは喋るひまがないほど忙しそうで、でも機嫌が良かった。

何かあったのか。

そして私は手の届かない位置にあるものを取ろうと脚立の上でつま先立ちをして頑張っている。正確には、手がかすってもう少しで取れそうなのだ。しかし、足も手もぷるぷると限界を訴える。

そして、お約束にもぐらりと足もとが揺れた。

「っ!?」


花がつぶれる!!


咄嗟に花のない、地面のほうに倒れるように体を揺らす。

しかし。

「うわ!大丈夫!?」

背中に温かさが伝わって、体が安定した。

胸が嫌なくらい高鳴る。
耳元でゆきさんの声。

「こおら!こういうときは俺を呼んでいいんだって!」

「う」

私を支えながら私じゃ脚立があっても届かなかった肥料の袋を軽々片手で背伸びすらせずに降ろしてくれる。くそう、かっこいいな。

「まったく、名無しさんちゃんて目を離すと危なっかしいんだから」
「ごめんなさい」
「いやあ?俺は役得だし、飽きなくていいよ。でもなんでわざわざあっちの危ない方に体揺らして倒れようとしたの」

腰を抱えられたまま尋ねられ、熱くなる頬を持て余しながら答える。

「だって後ろに倒れたら、花が潰れちゃうから」

せっかく咲いたのに人の手によって摘まれてしまった。ならばせめて一時でも愛でてくれる人の元に届けてあげたい。

「はああああ……」

気の抜けたような溜息がして、腰にまわされた腕の力が強くなり自然と体が密着する。

「うわ、うわ、ゆ、ゆきさん?」
まるで後ろから抱きしめられているようだ。顔に熱が上ってのぼせそう。

「まったくもう……確かに花屋やっててこよなく花を愛する俺には!君みたいな人がいるのは嬉しいけど!でももうちょっと自分のことも考えてよね〜……こういうときは犠牲にされたって、花たちだってうらまないさ」

「う、はい」
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