乙女ゲーム夢

□あなたなら
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「徳川……」

 告げられたのはここが今まで私がいた時代ではないということだった。幕末、新選組が活躍する時代。











「……原田、左之助さん」





「ああ。そうだ。お前は名無しさんだっけ?」

「……はい」

 私は膝の上でぎゅっと手を握った。


 ……ということは、この人は本物の原田左之助だ。


 でもここは新選組の屯所じゃなさそうだし……?





「お前、行くとこは?」




「あ……」




 なんと返せばいいのだろう。行くところなど、元からないけれど。この時代にはなおさら行くところはない。




「……」

 妓楼、に行けば家と職が見つかるだろうか。けれども私のような人間を使ってくれるのだろうか……? 身体中アザだらけの私を……?









「…よし! お前の家は今日からここだ」

「え……?」

 ぱっと顔をあげると原田さんが私を優しい笑顔で見つめていた。




「いいな?」

「で、でも……」

「行くとこ、ないんだろ? 俺んとこは悲しいかな俺だけしかいないんだし、遠慮するこたねぇよ。ああ、男と二人きりってのは……まあ、信用してもらうしかないけどよ」

「そ、そういうのではなくて……あの」

「……迷惑なんかじゃねぇよ。このままお前が出ていくのを放っておいてどっかでのたれ死なれた方が夢見が悪いっての」

「……原田さん」




「大丈夫だ。迷惑なんかじゃない。……大丈夫だから、な?」










 大丈夫、と何度も言い聞かせるように重ねて言ってくれるやさしい人に、私は深く頭を下げた。
 
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