乙女ゲーム夢
□あなたなら
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ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
……ぶたないで。
いつもと同じ朝。すぐに怒鳴り声が響いてくる。……はずだったんだけど。
「お、起きたか?」
男性の声に私はぱっと目を開けた。
……だれ?
優しい顔をした男の人がいて、すっと私に手をのばした。それに思わずびくりと身をすくませる。
でも、大きな手は私をぶたずにそっと額を撫でた。
「熱はもう大丈夫だな」
あの人じゃない……
でもどうして着物を着てるんだろう?
「しゃべれるか? 身体、辛くないか?」
「……しゃべれ、ます。すみません……大丈夫です」
半身を起こすと周りの風景が見えて、何か違和感を覚えた。……明らかに和風の家。土間があって目と鼻の先に玄関が見える。いまどき珍しい、古風な家……。
「俺は原田左之助ってもんだ。お前、名前は? なんだって俺の家の前で行き倒れてた?」
「え……?」
その人……原田さんの言ってることにいくつかひっかかって、私は思わず疑問の声をあげてしまった。
―――原田左之助、って……新選組の? 苗字が原田だったから左之助って付けたのかな? それに行き倒れって……。
「……あの、私……」
「怖がんなくていいぞ。ゆっくりしゃべってくれ」
「……」
私が怯えてるのに気づいてる?
私は優しげな笑顔に導かれるようにしてしゃべりはじめた。
信じられない現実が待ち受けているとも知らず。
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