ブラザーズコンフリクト夢
□椿
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「あーあ、あの子は今日学校行事で遅くなるのかー。俺さみしーよ梓ー」
「そうだね。でも妹萌えならあの子の妹を構いになってもいいんじゃない? 部屋にいるはずだよ」
リビングから聞こえてきたその声に、水を飲もうと部屋に入りかけた手を止めた。
「んー、やだ」
「どうして?」
「だって絵麻と違ってあの子表情変わらないし何考えてるかわかんないし、懐かないし喋らないし扱いにくいったらないんだもん」
――――――。
一瞬足が震えて、それなのにその場に縫い付けられたように固まった。
「せっかくならさー、もっとこう妹らしい子だったらよかったよねー。かわいくってさー」
「っ、椿!」
「え? あ……っ」
突然梓さんが声をあげた。
それに驚いた椿さんがゆっくりとこっちを見て・・・・・・。
『お父さんもちぃちゃんも大変なんだから泣いちゃダメ』
『ワガママ言っちゃダメ』
『静かにしていよう』
『困らせちゃダメ』
『一人で遊ぼう』
『私は一人で何でもできるから・・・・・・だから』
厄介ものにしないで・・・・・・。
慌てて踵を返して素早く自分の部屋の中へと飛び込む。
「・・・・・・」
やっぱり、一人暮らしさせてほしいって言うべきだった。
ちぃと違って私は集団生活に向いてない。
それなのにここに来たから。
ちぃやジュリに誘われるがままにここに来たから。
「・・・・・・馬鹿な私」
ぽつりと呟いても事態は変わらない。
お父さんに電話しよう。
――――ここに来ちゃ、いけなかったんだ。
(ない居場所)