遙か夢参
□リンドウ
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季節は夏へと移り変わっていた。
庭の様相も濃い緑へと変化して、部屋に差し込む日の光も強い。
「・・・・・・」
身を焼きそうなその熱を感じながら、少女は手をかざして太陽を見上げた。
―――――切ない。
胸が張り裂けそうなほど。
その理由を分かってはいるけれど、認めるとみじめさと切なさでどうにかなってしまいそうだから、考えないように思考を止める。
「ゆきくん、こちらに来て。冷たいものを持ってきたよ」
「はい、リンドウさん」
少女は一番嫌いなのは、名前を呼ばれる瞬間だった。
それでも悟らせないように笑顔を作る。
全ては男の平穏のために。
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