遙か夢参

□リンドウ
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男はその部屋の障子を開け中に入る。




中央に敷かれた布団に横たわる、青白い顔をした少女を見下ろし、名前を呟いた。





「――――――」





これまで幾日もの間目覚めはしなかった。




昨日も。




そしておそらく今日も。





不変の状態を信じていた男は、微かに動いたように思えたまぶたに目をこらした。けれども動きはない。見間違いだ。そう思った時だった。





ふる、と震えたまぶたがゆっくりと持ち上がる。






雪色の瞳が男を捉えた。




その時の感情を、どう表現すればいいのだろう。




落胆か、喜悦か。




あるいは両方か。







「ぁ・・・・・・」





「ゆきくん、僕のことがわかるかい?」





何かを言うべく震えた唇よりも先に真横に膝をつき顔を覗き込んだ。





少女の瞳が震える。





わずかに悲しげに。




そして、少女は蓮の花が開くかのようにふんわりと微笑んだ。





「―――――だれ、ですか?」


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