遙か夢参
□遠回り
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お姉ちゃんと都と一緒にお茶をしよう、と思ったけれど茶菓子がないことに気づいて私は市に出てきていた。
書置きだけを残してきたけれど、すぐに帰れば大丈夫だろう。
一応剣もはいていることだし。
首尾よく茶菓子を手に入れて帰宅途中。
「あの・・・・・・でも私、この辺りの道に詳しくないんです」
「そうなんだ。じゃあ、一緒にお茶でもしようよ。おごるからさ。ついでに観光案内もしてあげる」
人あたりのよさそうな男性に呼び止められて道を尋ねられた。
分かったものの詳しいことはわからないのだ、と言外に告げた言葉なのになんだか雲行きが怪しくなってきた。
「無理なんです。人を待たせているので」
毅然と言い返したつもりだった。
でも相手はおかしそうに目元を和ませて、「怖がってる? かわいい」なんて言い出す始末で。
ほとほと弱り切って、いよいよとなれば剣を出さなければならないか、と思っていたその時、ぐっと手首を掴まれた。
「!」
片手に荷物を持っているから両手を塞がれた形になる。
「悪いことなんてしないよ。ただ少し友好を深めよう。オレ、君のこと気に入っちゃった」
にこにこと笑う顔。
姿は優男。
だというのに――――腕は解けない。
「離してくださいっ」
ぐぐ、と腕を取り返そうと力を込めても取り返せなくてじりじりと彼の方に体が引き寄せられる。
初めて男女の力の差を感じて、怖くなった。
このまま連れて行かれてしまったら・・・・・・逃げられない。
さっと青ざめた私を、温かな腕がさらった。
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