遙か夢参
□惜しむのは命ではなく
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あなたに救ってもらったこの命を、あなたのために使うことになんの躊躇いがあるのでしょう?
でも……あなたの心が他に向くのは、苦しいんです。
「おはようございます、泰衡様」
「ああ」
銀と一緒に庭に膝をついて彼が現れるのを待つと、泰衡さんが黒衣を翻して姿を現した。
「本日はどちらに?」
「白龍の神子に会う。名無しさん、着いてこい」
「・・・・・・は」
毎朝のこの瞬間がとても嫌だった。
この世界に来る前に生き別れた友人と再会したその時にはお互いが無事だったことをとても喜んだけれど、本音を言えば泰衡様に彼女に会ってほしくない。
だって……何にも興味のない泰衡様が彼女には興味を示すから。
単純に白龍の神子に対する興味かもしれないけれど、それだけとも言えないから。
「行くぞ」
「はい」
促されてその背中の後ろに立って歩き出す。
・・・・・・好きに、ならないでください。
その広い背中に請うように心の中で呟いた。
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