遙か夢参
□酔っ払い!
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「頼むから大人しく寝てね〜…」
こわごわと彼女をベッドに降ろすと名無しさんちゃんは至近距離でにこぉっと笑うとオレの首ねっこに抱き着いてきた。
「景時さんすきぃ・・・・・・」
「……っ! まったく、性質が悪いんだから……」
柔らかな体を押し付けられて、平気でいられるわけもないのに。
挙句の果てに中途半端に熱を持った指先がオレの服を剥ごうとするものだから焦る焦る・・・・・・。
とほほ、と思いながら暴れる彼女と戦っていたら髪をくしゃくしゃと撫でまわされた後、胸元に顔を押し当ててすやすやと眠りに落ちて行った。
「・・・・・・生殺しって、まさしくこういうことだよねー」
大きなため息を押し殺して、オレは彼女のためにごそごそ布団をたぐって自分たちにかけたのだった。
「う…ん…」
微かに声を漏らして身じろいだ彼女の頭をぽんぽんと叩く。
「・・・・・・起きたかい?」
目がさえてしまって眠れなかった・・・・・・。
掠れた声で声をかけると彼女はもぞもぞとオレの腕の中で動いて・・・・・・ばっと身を起こした。
「え!? い……っ!」
「二日酔いしてるか〜・・・・・・」
頭を押さえてオレの胸に逆戻りした彼女を若干乾いた心で眺める。
そろそろ悟りが開けそうなんだけどな…。
ていうか、眠いな〜・・・・・・。
しょぼしょぼする目に手のひらを当てると少し腫れぼったかった。
「な、な、なんで・・・・・・?」
顔を真っ赤にして頭の痛みに顔をしかめたままオレを見下ろす名無しさんちゃんに、オレはぷいっとそっぽを向いた。
「教えてあげません」
「えー…?」
泣きそうな顔でオレを見る彼女に溜飲を下げながら、オレはもう一言付け足した。
「それから絶対にお酒禁止だよ。オレがいてもオレに許可とってね。オレがいなかったらいかなる場合でも禁止だからねっ」
「う、うー・・・・・・よくわかんないけどなんか失敗したのはわかったー・・・・・・」
くすん、と泣いてベッドに横たわった彼女の髪をさらさらと撫でてオレはようやく目を閉じた。
――――好きな子に手を出せないのに密着して寝るとか拷問だから。
2013/01/01