遙か夢参

□筒井筒
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「琴の名手?」


「ああ。妙なる調べを奏で、そして姿は天女もかくやというほどに美しいらしい」



「ふぅん・・・・・・天女、ね」



顎に手を当てて考える。




――――あの子も、琴が上手だったな、と。












幼い頃、幼馴染と呼べる存在がいた。



互いの両親もあわよくば筒井筒の中にしようとしていたのだが、世の中うまく行かないものだ。


向こうの両親が賊に襲われ命を落とし、私よりも年下のその幼馴染は親戚に引き取られていったのだという。


それ以来もう10年以上、彼女には会っていない。









「琴、と聞けば真っ先に彼女を思い出すとは・・・・・・三つ子の魂も百まで、とはよく言ったものだな」



自嘲の笑みを浮かべながら、私は幼馴染の顔を思い出した。

餅のように白く柔らかな頬を持ち、私が手を差し伸べると必ず嬉しげに破顔した、かわいいかわいい彼女。



ぱっちりした大きな目に自分の姿が映るたび、守らねばと思った。




「だがそれも、もう昔の話か」



彼女もそろそろ嫁に行く歳だろう。

もう行っているのかもしれないが。




私もそろそろ身を固めるべきなんだが……人には向き不向きというものがあるからね。



「今日のところは噂の君に会いに行くとしようか」


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