遙か夢参
□筒井筒
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「え!? 友雅さんって結婚してたんですか!?」
目一杯驚く神子殿にきょとんとすると、私の隣で鷹通がしたり顔で頷いた。
「愛妻家だという噂ですよ。身を固めたとたんに女性関係も真っ白になったと」
「まじかよ! この男がか!?」
遠慮なく驚く天真に視線を向けると頼久にまで逸らされてしまった。
「・・・・・・身を焦がすほど愛せる女性に出会えたのだ・・・・・・運命の相手に出会えたのだから、他に目は向けずともいいだろう?」
首を傾げてそう答えると神子殿が興味津々といった顔で身を乗り出した。
「ええ! 友雅さんがそんなに言うなんて気になりますっ! なれそめってどんなのなんですか? 教えてくださいっ」
「なれそめ、かい?」
「はい! どんな風に知り合ったのかとか、どうして付き合い始めたのかとか!」
「ふむ…」
あごをさすって周りを見回すと、神子殿ほどではないものの他の者たちも私が話し出すのを待ちわびている様子だった。
そんなに私はこの話をしたことがなかっただろうか。
そう考えながらも私はふっと笑みを浮かべた。
――――確かに自分自身のことを話すのは慣れていないな。
「・・・・・・あれは、今から10年ほど前だっただろうか」
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