遙か夢参
□運命を共に
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「葛城将軍!」
姿を見つけたのが嬉しくてぱっと笑顔を浮かべて走り寄ると、こつりと頭を小突かれた。
「かつ…?」
「今は忍人と。他に誰もいない」
「……っ」
ふ、と頬を緩めて優しく微笑む恋人に私は照れながらも小さくその名前を呼んだ。
「忍人、さん」
「ああ」
こんなに優しく微笑むことが出来たのだ、と最初にその笑顔を見たときは驚いた。
でもすぐに厳しい一面も優しい一面も彼の一部なのだとわかった。
「体の調子は、どうですか?」
体を冷やさないように、と持っていた肩掛けを彼の肩に羽織らせると忍人さんは驚いた顔をしてから嬉しそうに笑った。
「大事ない」
肩掛けを私にもかけるようにして抱き寄せてくれる優しさに胸の奥にぽっと光の灯るような感覚を抱いた。
―――破魂刀を使用するたびに、命を削っていく彼を止めることは出来ない。
いくら葛城忍人を愛していても、「葛城将軍」に死ねということは出来ない。
だから。
「忍人さん」
「うん?」
「…約束、してください。死ぬときは、一緒です」
小指を立てると忍人さんもその指に自分の小指を絡めてくれた。
「・・・・・・ああ。共に生き、共に・・・・・・」
その先は言葉にはならなかったけど、言葉には命が宿るともいうから、音にしなくてよかったのかもしれない。
愛おしげに重ねられた唇の熱を感じて、私はそっと目を閉じた。
2012/12/28