遙か夢参

□馬鹿な子ほど2
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「クリスマスなのに夜勤かぁ…」



ぽつん、と一人呟いて私は自分がそれほど落ち込んでいないことにくすりと笑みを吐き出した。







「ふぅ・・・・・・」



「桐生先生、休憩しましょう?」



「ああ」



カルテを見つめていた桐生先生に声をかけて紅茶を机の上に出すと、桐生先生がふと私を見上げた。



「瞬」



「え?」



「他に誰もいないからな。大丈夫だろう」




「え、と…」



無表情な桐生先生にじっと見つめられて、私は自分の頬が熱くなるのを感じつつ小さく小さく呟いた。


「しゅ、瞬…」



「ああ」



柔らかな笑みで答えてくれるその人とお付き合いしてるなんて、今思っても夢なんじゃないかと思う。




「あ、ああああの! ケーキ、買ってきたんですっ! せめてもクリスマス気分を、と思って!」



「そうか」



「はい! だ、出しますねっ」



心臓に悪い笑みを浮かべたままの瞬先生に、私は慌てて冷蔵庫からケーキの箱を取り出した。



「ブッシュドノエルにしようかと思ったんですけど…でも二人だけだし、ショートケーキにしました」



お皿の上にチョコとイチゴのケーキを乗せて瞬先生にどっちがいいかと聞くと、どっちでもと言われて私はチョコのケーキをいただくことにした。



「おいしー…」



至福、と思いながらケーキを頬張りつつ瞬先生の食べてるイチゴのケーキも気になってじっと見ていたら、瞬先生がくすりと笑った。



「え?」



「ん。食べたいんだろう?」


軽く首を傾げてフォークにケーキを乗せて差し出してくれる瞬先生にかっと頬が熱くなった。



―――私ってば見すぎだった!?




「い、いいですいいですすみません!」


恥ずかしくてたまらなくてそう言ったけど瞬先生はフォークを引こうとしなくて、私は真っ赤になりながらそのフォークにぱくりと食いついた。



間接ちゅーだ・・・・・・なんて子供っぽいことは考えないようにして口の中いっぱいに広がったイチゴの香りに頬を綻ばせた。



「おいしいー…」



「かわいいな、お前は」



「っ」



愛おしげに目元を和ませた瞬先生に、高鳴る心臓が壊れてしまったらどうしようと思いながらケーキを口に運んでいたら、さらりと瞬先生が。




「明日夜勤明け、ホテルをとってあるから」




「……っ!?」




思わずスポンジを喉に詰まらせそうになって瞬先生を見ると、なんだか幸せそうな顔で「ん?」と首を傾げられて・・・・・・私は何も言うことが出来ずにこくりと頷いた。




(聖なる夜に)


2012/12/25

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