遙か夢参

□比翼連理
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「名無しさん殿」



「藤姫ちゃん?」



困惑した様子の藤姫ちゃんが訪ねてきて首を傾げると、彼女はことりと首を傾げて「蘭殿が、名無しさん殿にお会いしたいと」とそう言った。



その後ろから姿を見せた黒髪の美少女に、私は心臓をわしづかみにされた気分に陥った。



何より、私の存在を責めるようなその瞳に。



こくりと喉を鳴らした私と対照的に、彼女は人払いを頼んだ。





人の気配がしなくなったと同時に、蘭さんは私に真っ向から噛みついた。




「兄さんから聞いたわ。友雅さんはあなたと付き合ってるって」




「・・・・・・」




「どうしてなの? あなたはあかねに巻き込まれたただの人でしょう? どうして、あなたがここにいるの?」





「…私がここにいちゃ、いけないの?」



わずかにもたげた反抗心。
でもそれは、蘭さんの涙と嫉妬を秘めた瞳にすぐさま消し去れらてしまった。




「だって! 私は黒龍の神子よ、それなのに白龍の神子であるあかねには八葉がいて私には何もない! ただ力を利用されて、戦わせられるだけ……っ! 辛かった、嫌だった。それなのに、どうして何の役割もないあなたがここでのうのうと暮らして・・・・・・あの人に愛されているのよ……っ!?」




その慟哭を、私はどう受け止めればいいのだろうと思った。


人形のように整った蘭さんの顔を真正面からぼうと眺める。



綺麗な顔。


綺麗な髪。



彼女と私とでは彼女の方が確実に優れている。


それがどうという話ではないのだけれど。





「友雅さんは私のために墨染に向かってくれたわ。そして彼はあかねの八葉だった。それなのにどうしてあなたがそこに出てくるの!?」





血のにじんだ叫び声。



彼女にとったらたまらないだろう。



だって私は彼女の希望を奪ったのだろうから。





「私は・・・・・・友雅さんが、好きなの」




小さく告げた自分の気持ち。




それが、ひどく・・・・・・虚しく思えたのも事実だった。



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