遙か夢参
□比翼連理
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さっそく出かけてくる、と言い残して駆けて行ったあかねの背中を見送りながら、私はため息をこぼした。
「・・・・・・あかねは、蘭さんに会いたいんだろうな」
会ってもきっと、傷つくだけなのに。
女の直感が告げる。
彼女は、あかねが好きじゃない。
「憂いた顔だね」
艶のある声にどきりとして振り向くと、狩衣を着崩した友雅さんが立っていて私の胸は無駄に早鐘を打った。
「友雅さん」
きっと私は今嬉しそうな顔をしている。
それがわかって、気恥ずかしいようななんとも言えない気分になってごまかす様に笑いかける。
「お仕事、終わったんですか?」
「ん? ああ、終わったよ。君に会うために終わらせてきたんだ」
にこりとした笑みとともにうそぶかれて、そうとわかっていながら頬が熱を持った。
「・・・・・・友雅さん、口が上手いです」
「口が上手いだなど、心外だな。本心だよ」
口元に手を当てておかしそうにくすくす笑う友雅さんを拗ねた顔で見て、私は照れ隠しにぷくんと頬をふくらませた。
「ああ…怒らないでくれまいか? つい君の反応がかわいらしくてね」
「・・・・・・褒められてる気がしないんですけど」
「おや、信じてくれないのかい? こんなに褒めているのに」
軽く肩を竦める友雅さんに不思議な気分になる。
あかねや藤姫をからかうのとはまた別の絡まれ方に、自分の立ち位置を見失いそうになって慌てて現実を見る。
私が彼と話をすることが出来るのは、私が「白龍の神子」の友人だからなのだと。
友雅さんも、八葉でないものの、私とあかねだったらあかねを優先して守るのだろうから。
そう考えて、ふと寂しくなった。
「名無しさん殿?」
「―――いえ、なんでもないんです」
でも、友雅さんが私を名前で呼んでくれることが嬉しい。
あかねのことは「神子殿」って呼ぶから。
だから。
そんなささいなことがすごく嬉しい。
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