遙か夢参

□言いたいこと
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その高貴な人に会えたら、言いたい言葉があったんだ。



「分かってると思うけど、あなたは京の現状を何も知らない」


「・・・・・・そう、ですね」



「東宮という位にあるのなら、自分の守る民をきちんとその目で見ないとダメだよ。だって、民には生活を豊かにする術はないの。搾取されるばかりなの。それをどうにかるのが、お役人や彰紋さんのお仕事なんだよ」




私の言葉に、彰紋さんはくすりと笑った。



「あなたと話していると、全てが簡単に思えてきます。ありがとう、名無しさんさん」



「え!? い、いいえ・・・・・・その、生意気言っちゃってごめんなさい」



うわぁうわぁ、恥ずかし……っ!

知ったような口聞いちゃったよ……っ!




私だって、東宮の位の重さとか知らないくせに……っ!





「他の人たちは禁裏にいろというだけで、僕に何も見せようとせず、教えようとせず・・・・・・でもそれではいけないとわかっているんです」



「彰紋さん…」


「院や帝といった争いを続けている場合じゃない。一刻も早く、平和な世を作らなければなりませんね」



厳しい顔から一転、にこと微笑みかけられて私はかぁっと頬が赤くなるのを感じた。



「そ、そうですねっ」




―――綺麗な顔してるんだから、破壊力満点だっ!




「あなたのことを、信用できないという人もいます。でも、僕はあなたの民を思う目は、嘘ではないと思っています」




きゅ、と手を握られて私は苦笑した。


突然この世界に現れた私を無条件で信じてほしいというのも無茶な話だって、わかってる。





「彰紋さんがそう言ってくれるだけでも、私は十分ですよ」




笑い返すと、彰紋さんとの距離が縮まった。




―――ん?




「名無しさんさん、僕は広い視野で周りを見ることのできるあなたをそばに置きたい」



「え、えーと。それは指導役としてってことですかね? 光栄です…」




あれでも近くない?


息さえかかりそうな距離にどぎまぎしていると、彰紋さんが私の顔をしたから覗き込んで微笑んだ。




「もちろんそういう意味もこめて。でも、それ以上に僕の愛する女性として傍にいてほしいんです」





その言葉に一気に思考がショートして、握られた手まで真っ赤になった気がした。




「あああああの、でもっ」




色気のある眼差しにあてられてまともに喋れない!





「周りは僕が説得します。お願いですから、どうか……」




お願いですから、というには強引に私との距離を詰め、私が微かに頷いたと同時に唇が重なった。






(秘めたる思いは強引に)
2012/9/23
 

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