遙か夢参

□独占欲まみれ
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――――神子姫様に負けず劣らず綺麗な名無しさん。



彼女に心惹かれるのに時間は必要なかった。


気づけば目で追い、近くに寄っている。



ただ難があるとすれば、彼女が気安く他の男にも触れることだ。





「ほんっと将臣ってばいきなり髪のびるんだからさー」



「しゃあねぇだろ。三年もたってんだぜ?」


くる、と将臣の腕に自分の腕を絡ませて甘えるような仕種をする名無しさんに、知らず眉間にしわがよった。





―――お前は、どうしてそんな風に他の男にも触れるんだろう。




「あ、ヒノエくん!」



ぱっと笑みを浮かべてぱたぱた駆け寄ってくる名無しさん。

いつもならかわいいと思って見るけれど・・・・・・。




「・・・・・・悪い。今気分が悪いから」



「え」




話す気はないんだ、と背を向けると名無しさんが傷ついた顔をしたのが見えた。

































苛々した気分を鎮めるために海を見に行って戻ってくると、縁側で弁慶と名無しさんが話しているのが見えた。




―――またか。




落ち着いた気分がまたささくれ立つのを感じて、踵を返したその瞬間、上ずった名無しさんの声が聞こえた。





「ヒノエくん、今日なんだか冷たくて・・・・・・嫌われたのかも」




―――なんだって?




「忙しかったんじゃないですか?」



「・・・・・・もしかしたら私がヒノエくんを好きだってわかっちゃって、それが迷惑で冷たくしてるとかだったら・・・・・・私、立ち直れない……っ」





ぽろぽろ泣き出した名無しさんを見て、俺は思わずその場に飛び出した。




「――ヒノエ」



「……っ!」



「弁慶。悪いけど席を外してくれ」




「やれやれ。わかりましたよ」




腰を上げて去って行く弁慶の気配が消えたと同時に、俺はおろおろしている名無しさんをぎゅっと抱きしめた。




「・・・・・・傷つけたね。ごめん」



「ヒノエ、くん……?」




徐々に顔を赤くする名無しさんを愛しく思いながら、その髪に口づけた。




「・・・・・・お前が好きだよ」




「えっ?」




「好きだから、他のやつらにべたべた触れて回るお前が腹立たしかったんだ」





そっと腕を緩めてその真っ赤な顔を見ると、いやおうなしに独占欲がわきあがった。



「お前も、俺のことが好き?」



「う、うん。―――ヒノエくんが、好き」




「ありがと。これからは、絶対に他の男の体に触らないこと。腕組んだり抱き着いたりはもっての外だよ。あと仲良くしすぎてもダメ」



「ヒノエくん?」




「・・・・・・悪いけど、俺はお前に関して割り切った関係なんてできないから。独占させてもらうよ」



2012/9/22
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