遙か夢参
□独占欲まみれ
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最初、望美と一緒にこの世界に飛ばされてきたときは戸惑って混乱してたんだけど、今ではこの世界に来れてよかったと思ってる。
だって、好きだと思える人に出会えたから。
「ヒノエくん、ヒノエくん! 神泉苑の桜が綺麗に咲いたって聞いたの! 一緒に見に行かない?」
勇気を振り絞ってヒノエくんを誘うと、ヒノエくんが笑顔で頷いてくれた。
「いいよ。見に行こう」
「ありがとうっ」
私の誘いに乗ってくれて、ほんの少し笑ってくれるだけでいい。
それだけでも、嬉しくて仕方がないから。
「わぁっ」
神泉苑の桜は満開だった。
「すごーい! すっごいキレイだね!」
思わずはしゃいでヒノエくんを振り返ると、ヒノエくんも目を細めて桜を見上げていた。
「ああ。綺麗だね」
その笑い方に、胸がきゅんとした。
―――好き、だなぁ。
「でも、桜も嫉妬しそうなほどお前も綺麗だよ」
私の髪に絡まった桜の花びらをすくいあげ、そんな風に言って笑うヒノエくんに一気に顔が紅潮して、私はむっと下から彼を睨みあげた。
「ま、またそんなことばっかり言って!」
「本心だよ」
くすくす笑うヒノエくんに顔の熱が引かない。
―――ほんとに本心だったらすごく嬉しいのに。
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