遙か夢参
□僕を見て
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名無しさんは九郎の妹で、九郎のことが大好きだ。
九郎も九郎で妹のことを目に入れても痛くないくらいに可愛がっている。
―――それが、おもしろくない。
だからわざと邪魔をしに行く。
それに怒るときは、名無しさんは僕のことを見てくれるから。
「・・・・・・僕も、なんて厄介な娘を好きになったのか」
九郎と同じように、向日葵のように咲く大輪の花。
人を惹きつけてやまないその輝きに、いつも心惹かれてしまう。
自分とは違うから。
自分ではその輝きを持てないから。
「それに、望美さんがいますしね」
彼女は、彼は気づいているだろうか。
ともすれば依存のような兄妹愛に終わりが近づいていることを。
―――何事もなく、時間が経てばいいけれど。
彼女が傷つかなければいいけれど。