遙か夢参
□怒るもすべてあなたのため
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「はい、もう大丈夫だよ。譲くん」
「・・・・・・ありがとうございます。すごいですね、名無しさんさんは・・・・・・」
「お褒めに預かり恐悦至極。さ、私のためにおいしいご飯を作ってきなさいな。あ、でもちゃんと休憩してからね」
私が母親のごとくそう言うと、譲くんは苦笑して頷いて部屋を出ていった。
「はふ・・・・・・」
治癒能力を使った後はやっぱり体が重い…。
ずしりとした疲れを目を閉じてやり過ごしていると、部屋の襖がすっと開かれた。
「!」
「・・・・・・やっぱり」
呆れた声をかけられて振り向くとそこには弁慶さんがいて、私はきゅっと首を竦めた。
「どうしたんですか?」
「どうしたじゃありません。怪我なら僕のところにやってくれれば治せると言っているでしょう」
今度は不満そうな顔だ。
双子の妹には見せない顔を見せてくれるその人に、私はにこりと笑いかけた。
「治せないならそう言って弁慶さんのところに行くように言いますよ?」
「そうじゃありません! その力を、使わないようにと言っているんです」
む、と口を尖らせてそう言う弁慶さんにとぼけたふりをして首を傾げると、彼は大きなため息をついた。
「治癒能力を使うな、と言っているんですよ」
「約束できません」
「名無しさんさん!」
「・・・・・・善処します、よ」
「・・・・・・はぁ」