遙か夢参

□不器用な人
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「あの、泰衡さん…さっき九郎さんが探していましたよ」


そう声をかけただけなのに、泰衡さんは私から目を背けて眉間にしわをよせていた。



――――そんなに、嫌いなのかな。



嫌われていると分かっていても切なくて、私を見ない目を待ってしまう。



こっちを見るかもしれない、と。




「わかった」



でも返されたのはその一言だけで、彼はそのまま立ち去ってしまった。


























なんで好きになったかとかそんなことわからない。


でも、無表情な中に優しさを見つけてしまったら私はもう気持ちを止めることが出来なかった。


望美ちゃんが敵を倒したいま、私たちが帰る時間は刻々と迫ってきている。



「・・・・・・」


私・・・・・・明日帰るって言われても、後悔しない?




嫌われてるけど、何の思いも伝えずに、後悔しない?




自分自身に問いかけて、私はぐっと拳を握った。





――――もう会えなくなるかもしれないのに。



あの時想いを伝えていたらよかった、なんて後悔だけは、したくない。


たとえ今辛くっても。

少しでいいから、意識してほしい…
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