遙か夢参
□私の王子様
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「あんたって徹底的に名無しさんに冷たいよな」
「・・・・・・何のことだ」
「とぼけんなって。気づいてんだろ? あいつの気持ち」
「・・・・・・私は、彼女の気持ちを受け入れるわけにはいかない。優しくすれば、かえって名無しさんを傷つける」
淡々と返したリズヴァ―ンに、将臣は片眉を跳ね上げた。
「へえ? なんで受け入れられないか聞いても?」
「私にはするべきことがある」
「名無しさんを受け入れながらじゃできないことか?」
「・・・・・・」
「他に好きな女がいるとか?」
「・・・・・・そういうわけではないが、忘れられない女性ならば」
「なるほどな」
お酒を傾けながらリズヴァ―ンさんが漏らした言葉の内容に、私は目の前が真っ暗になるのを感じた。
王子様には、お姫様がいたんだ。
もともと私がお姫様になんてなれるわけがないことはわかりきっていたはずなのに。
なのに。
――――どうしてこんなに胸が痛いんだろう。
一晩泣いて、目を腫らした次の日は具合が悪いと偽って部屋に引きこもった。
一目惚れに近かった。
でも知れば知るほど見た目だけじゃなくて、中身の良さを知って余計に好きになった。
でも、私の想いは報われないから。
リズヴァ―ンさんには忘れられない女性がいて、そして今は望美ちゃんが最優先なんだ。
それが分かって、もうどうしようもないのだと自分の気持ちにふたをした。
いきなり好きじゃなくなるなんてそんなこと難しいけれど、少しずつ忘れていこう。そう決意した。